もし、ちょっと昔の自分から今のあなたに向けた声が
突然届いたとしたら、きっと少し嬉しい。
うまくいっていた日も、うまくいかなかった日も、
そのときの気持ちを覚えている自分が、そばにいる。
けれど、そんな言葉は、ほとんどが残されることなく、
時間の中へ溶けていってしまう。
巡言電話は、そうした気持ちを、
未来の自分に向けて残すための装置である。
託した声は、時間を隔てて、過去の自分からの言葉として、
もう一度、自分に巡ってくる。
このような言葉を、本作では「巡言」と呼ぶ。
電話の本質は「かける相手がいる」こと。 巡言電話は、その相手を未来の自分にした装置です。ダイヤル式の黒電話に声を吹き込む。時間が来るとベルが鳴り、受話器を取ることで再生される——過去の自分の声が今の自分に届く。
「自分なのに自分じゃない」。そんな不思議な感覚が、日常の中に静かな対話を生み出します。 タイムカプセルや手紙が「特別な想い」を封じ込めるものだとしたら、巡言電話が扱うのは「特別ではない、今日の声」。朝起きる自分へのひと言、作業が終わったあとの自分へのねぎらい——気軽に、何度でも。
前作MONICOの実験で、被験者の多くが翌朝の自分の声に「励まされた」「いたわってくれた」と感じた。その体験を広げたのが巡言電話です。
JIDF学生文化デザイン賞 株式会社丹青社賞受賞
https://www.jidf.net/projects/archives/idft20261/